あひるの仔に天使の羽根を
 
そんな時、長い髪を靡かせ女装したままの玲が現れ、桜や遠坂とも合流した。

だけど芹霞と櫂が居ねえ。


櫂が居て、芹霞と万一の事態に陥っているなんてのは考えにくい。


だけどよ、何だか嫌な予感がして。


それは俺だけではなかったらしく、


芹霞と櫂の捜索が始まった。


結論的に――


寄り添うように倒れていた2人を見つけたのは、小憎たらしい少女――と瓜2つの顔をした少年で。


多分双子って奴だな。


髪型が同じなら、全く見分けがつかねえ。


玲とその少年は先に知り合っていたらしく、


少年は俺等に向かって手を振っていた。



「旭~」


そう叫んで駆け寄る少女の背中。


皆で絶句した。



羽根があるッ!!!



それは少女だけで。


特別、飛べるわけでもなさそうだ。


玲は神妙な顔をして、少女の翼を弄ったけれど、


「多分――本物。


きちんと……骨格もある」


半ば唖然と、そう言った。


「うっわあ、こいつ本物の"悪魔"かよ……」


思わず呟いた俺に、短髪の…旭と名乗った少年は言った。


「ユエは"てんし"だそうです」


その顔はそう信じ切っている。
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