あひるの仔に天使の羽根を
激痛に意識を手放す直前、
「……?」
その闇の力は突如、力を緩めて逆行し始めた。
逆回転を見ているように、あたしの内部からも、螺旋状に巻き付くそれも……あたしから去っていく。
夢――?
だけど残っている。
膨張した心臓の感覚。
破裂寸前の痛み。
あたしは胸に手をおいて荒い呼吸を繰り返す。
身体の中に残る、生々しい漆黒の残滓。
違和感を残すそれが、本当に去ったのかを確認するように、
服の中を覗いて見てみたあたしは……
「な!!!」
胸に――
肌に――
傷口を中心として、
黒い触手のような幾何学模様が拡がっているのに慄然とした。
それはまるで――
あたしが闇の獲物だというような烙印のように。
何これ、一体何!!?
焦る頭の中に、顕れるもう1つの感情。
既視感。
――汝、選べよ。
あたし――
以前もこんなことあった?
――約束だよ、せり。
「あ~あ~、"また"食らっちゃったんだ、お姉さん」
震える顔を上げれば、
金色の瞳。
金色の髪。
「それとも闇の恐怖による、"蘇り"? そこまで闇が恐かったの?
それとも恐怖したのは、紫堂櫂?」
白い神父服。
陽斗の顔で、司狼は薄ら笑いを浮かべた。
あたしは――
それに悪寒を感じた。