あひるの仔に天使の羽根を
「何を…言ってるの?」
「都合いいこと忘れられるのって得だよね、あ…それはあの『気高き獅子』も一緒か。馬鹿だよね、自分の役割も気づかず…自力で逃れることも出来ないなんてさ。結果…お姉さんはこのザマだ。所詮あの男はその程度。"運命"を変えられやしない」
「……?」
「本当にしぶといお姉さん、ここでようやく悪運尽きるのかな? あははははは」
――ぎゃははははは。
「今度こそ、ちゃんと"お勤め"果たさないとね。僕がいるから、もう"見逃し"をさせないし。
そんな中悪いけど、お姉さんの立ち位置は"特殊"だから、ちょっと僕と一緒に来てもらうよ? ここはウザい紫堂がいるし」
そして司狼は、彼の背よりも高いあたしを、易々とその肩に担いだ。
「どっちの結末辿るかは、お姉さんに選ばせて上げるから」
まるで……あたしの記憶の中の陽斗のように。
「離して!!」
「やだね。大人しくしてよ」
「誰がするもんですか!!」
あたしは手足をばたばたさせて、更に司狼の肩に噛付いた。
「大人しくしろって言ってんだろうが!!!」
怒声と共に、洗面台が木っ端微塵に砕け散る。
何?
一体何?
それでも負けじと抵抗を見せたあたしの頭に、物理的な衝撃が走る。
あたしは……彼の肩の上で殴られたらしい。
うう……視界が揺れる。
「僕に刃向かうな。煩い女は大嫌いなんだよッッッ!!!」
今度は腹に衝撃。