あひるの仔に天使の羽根を
「何でこの僕が"女"の言いなりにならないといけないのさ。どうして僕が扱き使われないといけないのさ!!!」
今度は憎憎しげにあたしの腕を捻り上げた。
捻り取られそうな恐怖に、あたしは無意識に悲鳴を上げた。
「煩い、煩い、黙れッッッ!!!」
彼の苛立ちはそれに止まらず、部屋という部屋が、派手な音をたてて残骸に変わる。
「いい加減にしろ、司狼」
突如威圧するように聞こえたのは、女の声。
聞き覚えがある。
薄れた視界に入るのは……
金色の瞳。
金色の髪。
白い服。
陽斗と司狼の顔を持つ……"女"。
「……っち、蓮(レン)か」
司狼の舌打ちの声。
「何しに来たんだよ、"刹那"の犬が」
セツナ?
「邪魔する気? あははは。蓮にとってこいつらは仇なのに? お前の姉を死に至らしめた憎い奴だろ?」
何を――言ってるの?
姉?
「ならば壊された兄の為にお前は動いているというのか、司狼? 打算尽くめのお前は、そんな殊勝な子供でもなかろうに」
兄?
ああ駄目だ。
視界が殴られた傷みに薄らいでいく。
声が遠のく。
「全ては刹那様の御意志の元に」
最後に――
懐かしい陽斗が……
そう言って笑った気がした。