あひるの仔に天使の羽根を
玲くんは――
どんな気持ちであたしと付き合ったんだろう。
櫂を戻す為だと思った。
あたしを思いやっているのだと思った。
だけど。
それ以外が混ざっていたことを知ってしまった。
思ってもみなかった事態だった。
時間は沢山あったのに。
2ヶ月も一緒に病院で過ごしていたのに。
だけどもう――
"気づかなかった""知らなかった"だけでは流せない。
それくらい真剣なものをあたしは感じてしまった。
我慢ばかりしている玲くんの、あんな顔は初めてだったから。
だけどあたしはまだ、
煌を傷つけても玲くんに走る覚悟がない。
そして。
玲くんを傷つけても煌に走る覚悟がない。
こんなに煌も玲くんも好きなのに。
どうしてこの好きだけじゃいけないんだろう。
どうして今まで通りじゃ駄目なんだろう。
誰をも傷つけずに、丸く納める方法はないんだろうか。
ああ――
誰かを選ぶことで大切な誰かを傷つけるのが恋愛だというのなら。
あたしは恋愛なんてしたくはない。
誰かを傷つけるくらいなら。
誰かが泣くくらいなら。
だけど。
誰かを選ばないといけない時期にきているのが判る。
それが――酷く悲しい。
大好きなのに。
どうしてそれだけではいけないの?
大好きなのに。
どうして他を排さないといけないの?
また――
殴られた痕が痛んだ。