あひるの仔に天使の羽根を

柔なあたしの身体。


また変な処に拉致られてしまって、皆に迷惑かけてるんだろうな、きっと。



櫂――なんだろうか。



あの闇。


殺意のあの闇。



あたしは櫂に会うのが怖い。



初めて、櫂が…櫂の司る闇を怖いと思った。


虚構の怪物は怖いけれど、現実の怪物には何故か耐久性があったのは、あたしはきっと現実世界で櫂の闇に守られてきたからだと思う。


心も身体も安心して身を委ねきることが出来たから。


だけど、櫂と別離に至る今となっては、無性に闇が怖い。


暗澹たる闇が、櫂の底知れぬ憎悪の気がして。


闇があたしの敵になった気がして。



――芹霞ちゃああん。



何でこうなってしまったんだろう。


少し前までは、あたしは全面的に櫂を信じることが出来たのに。



身体に広がる闇の痕。


それはあたしの櫂への不信感のような気がして。



振り切るように頭を振って、改めて自分の置かれた状況を眺めてみる。



あたしは箱のような空間に居た。


四方八方黒い壁面に囲まれた空間。


漆黒色の所々に、走る赤い線。


あたしは、そんな外壁をした建物があったことを思い出す。

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