あひるの仔に天使の羽根を
 

そして司狼は――


残忍な笑いを作ってあたしの腕を掴んで引き摺った。


備え付けの小さな機械に、司狼は胸に飾っていた十字架を垂直に差し込むと、硝子だと思われたうちの1部分が開いた。


「此処は予選。闘技場での本戦までは道は長いよ?

競り勝てる程身体は強くなったというのに、あいつらの自我は崩壊したままで、一向に強くならないみたい。

ふふふ。人間って変だよね」


まるで自分は人間ではないような言い方をして。

そしてあたしは――


「本当なら神聖なる"選別"には"女"は不必要だったんだけれど、外部からの侵入者のおかげで、やむなく作戦変更。

恨むなら、そいつらを恨んでね。

まあ…元より"リリス"たるお姉さんは、闘いは免れなかっただろうけど」


噎せ返るような、饐えた悪臭放つ空間に放り込まれ――


「"あっち"の結末が運命なら、きっと生き残れるよ。

多分――ね?」


後方で、そのドアが重い音を立てて閉められた。


噎せ返るような悪臭。


透明な仕切りの奥には司狼の姿。


そして手前には――


「ぐひひひひひひ」


日本刀を持つ男だけ。


歪んだ笑い浮かべた男の足下には、頭部と四肢を斬り落とされた…胴体と思われる血塊が増えていて。


噴水のように弧となり噴き出す血潮の中で、ライフルが赤く濡れている。


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