あひるの仔に天使の羽根を
・素懐 桜Side
桜side
********************
――今夜、玲様は芹霞さんを抱く。
私の言葉を受けた煌は、予想通りの判り易い反応を示した。
だからこそ。
だからこそ、この宣告は私に託されたのだ。
私は、裂岩糸で馬鹿蜜柑を縛り上げ、痛めつけて、散々説教して、一通り怒鳴り終わった処だ。
「……何でだ…よ?……俺だって!!」
馬鹿蜜柑は、それでもまだ潤んだ反抗的な目を寄越す。
「てめえが一番判るだろうが、自分のことは!!」
馬鹿煌は何かを言いかけたが、悔しそうに唇を噛みながら横を向いた。
その顔から…納得はしていないようだが"戦意喪失"は見て取り、私は拘束を解く。
「……それが理由かよ」
褐色の瞳だけが、私に向けられる。
「は?」
「桜が荒れた理由」
私は…目を細める。
まさか――
私の邪な想いを気づかれた?
こんな愚鈍な男に?
即座の反応が出来ない私の様子を見て、煌は苛つくくらいの大げさな溜息を零して、頭をがしがしと荒く掻く。
「……マジ勘弁して欲しい気分だけどよ、俺…聞かなかったことにする」
「……聞いてもないだろうが!!!」
「はいはい、そういうことにしといてやるから」
大きな手を上げて、その指先をひらひらと私に向けて揺らす。
その…いつもの如くの馬鹿げた仕草に、
「やる気か!? コラァ!!!」
先刻までの荒んだ心が、幾分かだけれど……抑えられたように感じるのは、きっと気のせいだろう。
言わない。
絶対言わない。
その意味を込めて、また逃げる煌に向けて外気功を放つ私。
いい憂さ晴らしだ。
********************
――今夜、玲様は芹霞さんを抱く。
私の言葉を受けた煌は、予想通りの判り易い反応を示した。
だからこそ。
だからこそ、この宣告は私に託されたのだ。
私は、裂岩糸で馬鹿蜜柑を縛り上げ、痛めつけて、散々説教して、一通り怒鳴り終わった処だ。
「……何でだ…よ?……俺だって!!」
馬鹿蜜柑は、それでもまだ潤んだ反抗的な目を寄越す。
「てめえが一番判るだろうが、自分のことは!!」
馬鹿煌は何かを言いかけたが、悔しそうに唇を噛みながら横を向いた。
その顔から…納得はしていないようだが"戦意喪失"は見て取り、私は拘束を解く。
「……それが理由かよ」
褐色の瞳だけが、私に向けられる。
「は?」
「桜が荒れた理由」
私は…目を細める。
まさか――
私の邪な想いを気づかれた?
こんな愚鈍な男に?
即座の反応が出来ない私の様子を見て、煌は苛つくくらいの大げさな溜息を零して、頭をがしがしと荒く掻く。
「……マジ勘弁して欲しい気分だけどよ、俺…聞かなかったことにする」
「……聞いてもないだろうが!!!」
「はいはい、そういうことにしといてやるから」
大きな手を上げて、その指先をひらひらと私に向けて揺らす。
その…いつもの如くの馬鹿げた仕草に、
「やる気か!? コラァ!!!」
先刻までの荒んだ心が、幾分かだけれど……抑えられたように感じるのは、きっと気のせいだろう。
言わない。
絶対言わない。
その意味を込めて、また逃げる煌に向けて外気功を放つ私。
いい憂さ晴らしだ。