あひるの仔に天使の羽根を

・素懐 桜Side

 桜side
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――今夜、玲様は芹霞さんを抱く。


私の言葉を受けた煌は、予想通りの判り易い反応を示した。


だからこそ。


だからこそ、この宣告は私に託されたのだ。


私は、裂岩糸で馬鹿蜜柑を縛り上げ、痛めつけて、散々説教して、一通り怒鳴り終わった処だ。


「……何でだ…よ?……俺だって!!」


馬鹿蜜柑は、それでもまだ潤んだ反抗的な目を寄越す。


「てめえが一番判るだろうが、自分のことは!!」


馬鹿煌は何かを言いかけたが、悔しそうに唇を噛みながら横を向いた。


その顔から…納得はしていないようだが"戦意喪失"は見て取り、私は拘束を解く。


「……それが理由かよ」


褐色の瞳だけが、私に向けられる。


「は?」


「桜が荒れた理由」


私は…目を細める。


まさか――


私の邪な想いを気づかれた?


こんな愚鈍な男に?


即座の反応が出来ない私の様子を見て、煌は苛つくくらいの大げさな溜息を零して、頭をがしがしと荒く掻く。


「……マジ勘弁して欲しい気分だけどよ、俺…聞かなかったことにする」


「……聞いてもないだろうが!!!」


「はいはい、そういうことにしといてやるから」


大きな手を上げて、その指先をひらひらと私に向けて揺らす。


その…いつもの如くの馬鹿げた仕草に、


「やる気か!? コラァ!!!」


先刻までの荒んだ心が、幾分かだけれど……抑えられたように感じるのは、きっと気のせいだろう。


言わない。

絶対言わない。


その意味を込めて、また逃げる煌に向けて外気功を放つ私。


いい憂さ晴らしだ。




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