あひるの仔に天使の羽根を
「ぬおおお。ボクは唯のコス好きなアニオタ出身、師匠みたいな機械に精通した生粋の電脳オタクじゃないんだぞおお!!! 手加減しろよ、この野郎!!! ああ~折角修正したそこをまた書き換えるか、苦労を返せべらぼうめ~!!! ……って、それより神崎だッ!!!」
もう彼女の1人ノリツッコミには慣れて来たけれど。
「神崎が拉致られたんだ。今紫堂と師匠が向っている。場所は式典会場だって、師匠からの簡易メールが届いた。あの師匠の時計は凄……おい、葉山!!?」
私は部屋から飛び出した。
芹霞さんが、拉致られた。
いても立ってもいられない。
ああ。
いつもこんな気分だったんだろうか、櫂様も玲様も馬鹿蜜柑も。
まさか私まで、こんな焦慮感にこの身が動くとは思わなかったけれど。
激情というものは、こういうものなのか。
「うわ、何だこいつら!!?」
玄関のドア開けた時、目に入ったのは夥しい人の群れ。
真紅色に染められた、凄惨な殺し合いの風景。
2ヶ月前の血色の薔薇の痣(ブラッディーローズ)を彷彿した。
――プロテクト解除したら、多分"刹那"は即座に、僕達に衆敵を差し向ける。
この建物は、敵に取り囲まれているのか!!?
私の手には裂岩糸。
煌の手には偃月刀。
玲様のプログラムは、私達の武器を取り戻した。
「な、何で顕現出来るんだ!!?」
それを驚く煌にいちいち説明しないといけないのが面倒だけれど。