あひるの仔に天使の羽根を
「なあ桜。俺達此処を突破出来たとしても……此処に残っている遠坂達が危ないよな」
回転する煌の偃月刀。
薙ぎ払われる人体。
「芹霞の危機に、今…紫堂の力も俺達の力も下手に無効化されたら溜まらねえ。いわば俺達の動線は、遠坂にかかっている」
宙に浮かぶ色取り取りの魔方陣。
発動前に私の裂岩糸が、その手を切り落とす。
「お前……芹霞の処に行けよ」
「は!?」
「こんなんじゃ玲も…櫂も足止め喰らってるだろ。力の強弱じゃねえ、時間がかかることがもどかしい。此処…さっきの地下に繋がっているんだろ?
だったら地下の裏道使って、最短で芹霞を迎えにいけよ」
そう笑った煌は、何処となく儚げで。
判っている。
芹霞さんを迎えに行きたくて溜まらないことは。
――芹霞、来いよッッッ!!!!
あの慟哭は忘れない。
忘れられない。
煌の心を痛いほどよく感じてしまったから。
それなのに――