あひるの仔に天使の羽根を
そして何とか行き着いた、奇妙な外壁を持つ式典会場。
改めて目にしても、この壁の鉱質を想像すら出来ない。
ただ…ぞくりとする。
未知なるものだからなのか。
俺は玲とともに赤い絨毯を踏みしめ、入り口の開閉を待った。
しかし入り口は開かず、逆に騒がしげな機械音が鳴り響く。
「防御プログラムが変更されたのか。完全に僕達を仕留めようとしているな。これ以上僕の力を分散させたくはないけれど、仕方が無い」
玲は月長石を握りしめた。
途端、身体に揺らめく青い光。
目を瞑り、ドアと思われる部分に手をあて、少し苦しげな表情を見せる玲。
恐らく……機械で管理されている此処のシステムを、意識上で書き換えているのだろう。
玲の"コード変換"。
俺はただ眺めているだけだ。
肝心な部分は、俺は役に立たない。
芹霞の居場所を掴めない俺。
芹霞の居場所を開けない俺。
俺に出来ることは、機械音によって現れた新手を蹴散らすコトだけで。
それくらい……誰にでも出来ることで。
俺だからという優越性も、特殊性も、何1つなく。
玲は一人で、芹霞を迎えに行ける。
だけど俺は。
玲が居なければ芹霞を迎えに行けない。
惨めだ。
俺と芹霞の絆の脆さを、酷く呪った。