あひるの仔に天使の羽根を


玲は躊躇うことなく見えた階段を昇り、左右に道が分かれた処で足を止めた。


「左には……式典前に居た控室しかなかったと思ったが」


玲が返事をせず、右に進んだ時だった


「さっさと入れって言ってるんだろうが!!!」


かなり苛立ったような声が響いたのは。


右に曲がった突き当たりに、誰かが居る。


遠目でも目に鮮やかな、黄金の色彩。


金色の瞳、金色の髪。


「陽斗!!?」


陽斗の顔に酷似した顔は、まだ幼く。


小さい背格好からも子供かと思ったが、神父服を着用しているならばある程度の年齢には達しているのだろう。


白い服……そういえば、船で襲ってきたあの女も、陽斗と同じ顔で白い服だった。


姉弟か何かか?


陽斗は家族はいないはずだった。


それでも他人の空似と言い切れぬ程の、不自然さ。


偶然か、必然か――。


そんな中、白い神父が、手にしていた大きな何かを部屋の中に放り込んだ。


「芹霞!!?」


一瞬だったが間違いない。


俺が間違えるはずがない。


反射的に俺達は、その白い神父を追いかけた。


ドアが自動で開く音。


目の前に拡がるのは、パノラマ状に左右に拡がる透明な硝子。


「………。へえ…来たんだ。結構…厳重な警備システムにしていた筈なんだけどね、『白き稲妻』の"コード変換"…教祖様も手を焼くわけか」


特に驚いた様子も見せず、硝子を背にして陽斗に似た男は笑った。


子供のように無邪気に。

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