あひるの仔に天使の羽根を
「勝ち進むって……?」
玲の顔つきが、冷淡なものに変わっていた。
お互いの力を推し量っているのか、男と玲は一定距離を保ったまま。
「だから13人でするデスゲームさ。殺し合いに勝てば勝ち。死ねば負け。1階の本戦に進むまでは2階の小部屋で6つの予選を勝ち抜かないと駄目。最近軟弱者多いから、観客もお気に召さないようでブーイングの嵐。ありえないよね、何度本戦行っていると思ってるんだろ。それじゃなくても予定外の敵には邪魔されるし、それでも人員確保するこっちの身にもなれってんだ」
子供なのか、大人なのか。
屈託ない笑いを見ても……騙されてはいけないと警鐘が鳴る。
こいつは……危険だ。
「折角お姉さんの"壊れる"瞬間見たかったのに、お姉さんに向けられた日本刀が血錆で突然ぽっきり折れて、それで男の喉に突き刺さって終了なんて酷くない? 今度は愉しませて貰わないとね。君達も一緒に愉しまない?」
――ぎゃははははは。
「お前が…煌が会ったという"チビ陽斗"か。
先刻教祖って言ったよね。それは"刹那"?」
刹那って……玲が話していた老人のことか?
それとも俺が見た、樒の愛人か?
――愛して上げて下さい。"刹那"様を。
ずきん。
何かを言った旭の言葉が、痛みでかき消される。
「お姉さんはね、愛されているんだ。"刹那"にね」
ずきん。
「それで狂っちゃった。皆み~んな。まあ……創始者程ではないけれどね」
あははははは、男は笑う。
「芹霞をそこから出せ」
それは、拷問時に出す玲の声。
「あはははは、恐い顔~。蓮がびびったの判る~。だけどね、僕さ~」
そして言葉切って、玲を見た。
「命令されたかねーんだよ、特に紫堂にはさ!!!」
"えげつない"顔に何1つ怯むことなく。