あひるの仔に天使の羽根を
「じゃあ……力尽くで言うこときかせるぞ」
それを平然と受ける玲も崩れることなく。
益々顔と声を硬化させて。
「ふうん、僕にそんな口きくんだ? まあいいよ。僕も退屈だったし。
此処からのこのデスゲームはさ、本戦までの時間短縮のため、あの密封室内から少しずつ酸素抜くんだ。1人になるためのゲームが、時間かかりすぎれば下手すりゃ全滅。そこでちょこっと僕の機転で玄人を入れてみたんだ」
透明の硝子の奥。指差した処にいたのは――
「桜!!?」
「忍び込んだの判っても、何もしないでいてあげただけなんだけど。とりあえず、『漆黒の鬼雷』なら素早さ勝負。酸欠でアウトっていう事態はなくなりそう。だけどそうしたらお姉さん死んじゃうか。非情な『漆黒の鬼雷』が死ぬわけないし、2人仲良く生き残っていたら酸欠で死んじゃうね、どうなるんだろう。わくわくするね、あはははは」
その苛ついた笑い声を遮ったのは、玲で。
「芹霞と桜を早く出せ!!!」
玲の怒声と共に、電磁波が盛大に放出された。
硝子も……そして男にも弾かれる。
「!!?」
見れば、男の手の中には手鏡。
いつか船で見た、女が持っていた銀の模様が入った鏡。
「ニトクリスの鏡は……中々だね。蓮から奪い取ってよかった。あ、それからさ、どんなに紫堂の力を硝子にぶつけても無駄だから。それは…加工したとはいえ、トラペゾヘドロンだから、吸収するからね。紫堂の力如きに動じないよ?」
そして男は、玲ににっこり笑った。
「さて。腕に自信があるのなら、僕を倒してから助ける方法探せば? まあ、お姉さん達が生きている内に僕を倒せたらだけどね、うふふふふ」
――ぎゃはははは。