あひるの仔に天使の羽根を
身の程知らずなあたし。
本来なら、始めからこういう立場にあったんだ。
櫂は居ない。
煌も居ない。
玲くんも居ない。
彼らが常にあたしの傍に居たことは、正に奇跡的。
それに気づかず、更には誰彼も傷つけて。
そんな身勝手なあたしは、罰が当たったんだ。
あたしが…誰も呼べない立場に居ることを認識する。
恐い恐い恐い!!
いつ始まるのか判らない、地獄絵図。
またあの闇色に侵蝕される。
またあの真紅色に凌駕される。
恐い恐い恐い!!
そんな時、あたしの腕がガシッと掴まれて。
「ひっ!!?」
あたしは思わず悲鳴を上げ、大きく身体を震わせた。
「殺さないで、殺さないで!!!」
生存本能というものは恐ろしい。
いっそ今此処で命がなくなってしまえば、いつ開始されるか判らないこんな恐怖から逃れられるのに。
それでも"生"に執着するのは何故か。
「殺さないで、殺さないで!!!」
ただ闇雲に手足を動かし、泣き叫ぶあたしの頬を叩いたのは、
「芹霞さん!!! 桜です!!!!」
大きな目を痛いくらいに向ける桜ちゃんで。
「芹霞さんを迎えに来ました」
強い意志でもってあたしを見つめる。