あひるの仔に天使の羽根を
事態を悟った時には、沢山の銃弾が綺麗に切断された状態で動きを止めていて。
ふわり。
落下したあたしは桜ちゃんの手の中にいて。
所謂お姫様だっこで。
桜ちゃんが指をくねらせると、糸と共にばらばらと何かが落ちた。
銃弾――だ。
その時、桜ちゃんの頭が後ろに引っ張られて、
「!!!」
桜ちゃんの長い髪を鷲頭掴む男が、巨大な植木バサミで…桜ちゃんの頭を切り落とそうとしていて。
「させない!!!」
あたしは桜ちゃんの首筋を守るように身を乗り出して抱きつき、サバイバルナイフで、男の手の甲に突き刺した。
男は声を上げて後退る。
「ふん!!! 桜ちゃんはあげないわよ!!!」
鼻息荒く、桜ちゃんを思いきり抱きしめていたあたし。
「………芹霞さん」
あたしの胸の中から、埋もれた声がする。
「顔に……胸が……」
ひっ!?
反射的に桜ちゃんを突き飛ばせば、距離があいたその場所に何かが振り下ろされたのが同時で。
本当に息つく暇もない。
何だか煌の偃月刀を大きくしたような、大きな武器の攻撃を間一髪避けられたらしい。
もし桜ちゃんがあたしのぎゅうに声を出さなかったら、危なかったと思う。
桜ちゃんは回し蹴りでその武器を弾き、宙に浮かんだそれを、高い跳躍力で手にして、回転しながら男に切りつけた。
男の姿がどうなったのか……あたしは恐くてそちらに目を向けられなかった。