あひるの仔に天使の羽根を
 

「……皆の気持ちが判る。天然最強…い、いえ独り言です。ええと、ここから逃れる術は……恐らく"1人"になればいいということ」


あたしはよく判らなくて目を細めた。


「1人って?」


あたしの目は、桜ちゃんの手の中にあるナイフから、何故か目を逸らすことが出来ず。


「1人以外、全員……死ねばいいんですよ?」


事も無げに言い除けた桜ちゃん。


大きい目に……何かが走り抜け、顔には薄い笑いが浮かんでいた。


それに、あたしはぞくりとした何か不穏なものを感じてしまう。


「……芹霞さん、どうしました? 顔色悪いですけど」


「い、いや? 大丈夫…あたし元気。ところで桜ちゃん。そのナイフ…あたしが持っているよ。危ないから……ね?」


凄く気になるんだ。


やけに気になるんだ、その凶器。


すると桜ちゃんは黙り込んで、ナイフとあたしを交互に見つめた。



「ねえ……芹霞さん」



それは抑揚がない…ひやりとするような冷たいもので。




「僕を……疑ってます?」



恐い。


桜ちゃんが恐い!!!



「な、ななな何を?」



何で声が震えるの、あたし!!!


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