あひるの仔に天使の羽根を


「ごめ、ごめん、桜ちゃん!!! あたしが全面的に悪かった。ごめん、本当にごめんなさい。桜ちゃんはそういう子じゃない!!! 許して、あたしどうにかしてた!!!早く一緒にここから出よう!!!」


あたしは涙交じりで桜ちゃんを抱いて許しを乞い、そして桜ちゃんは……



「此処から出るのは……

あくまで1人だけです」



低い声で言った桜ちゃんは――



「血に塗れた者の最期としては…いい場所ですよね?」



ナイフを自分の腹に突き刺し――




「生き残りは1人になった、ここを開けろ!!!」




そう天井に向って、大きく叫んだ。


「やだ……冗談よして、桜ちゃん。桜ちゃん!!!」


崩れ落ちる小さな身体。



「僕は……貴方を守りたい…」



あたしに向ける、儚げな笑顔には血の気がなく。


浅い息には、酸素が十分ではなく。



「いつまでも……笑っていて欲しいんだ」



「笑う。ねえ笑うから……桜ちゃん、しっかり!!!」



「貴方が……のものになるくらいなら……」



その声は震えて小さくなって途絶え、荒い息に変わっていく。


「桜ちゃん!!?」


やだやだやだ!!!


苦しくなる意識の中で、あたしは桜ちゃんの腹に深く突き刺さるナイフに手をかけた。


これを抜けば。



これを抜いたら、きっと桜ちゃんは楽になる!!!



一気に引き抜こうとした時。




「逆効果だ、やめろ、せり!!!」




振り返ると、久遠が立っていた。



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