あひるの仔に天使の羽根を

「くお…久遠……お願い、桜ちゃんを……ねえ桜ちゃんを!!!」


何故此処に久遠が居るのか。


どうして此処に来ることが出来たのか。


そんな疑問よりもまず、冷たくなる桜ちゃんを助けて貰いたくて。


「お願い、桜ちゃんを助けてッッッ!!」


あたしには妙な確信があった。


久遠なら。


久遠ならきっと。


桜ちゃんを助けられると。


久遠ならきっと――。



――助けてええ!!



久遠は堅い表情をして、もう動かない桜ちゃんを見た。


瑠璃色の――冷たい瞳で。


「危ないな……もう逝きそうだ」


「駄目…連れ戻して、久遠!!!」


あたしは久遠にしがみついて、必死に助力を乞うた。


「久遠しかいないの、桜ちゃんを連れ戻せるのは…久遠しかいないの!!」


すると久遠は苦しげに眉根を寄せた後、あたしをそっと後方に離した。


その瞳の色は、紅紫色になっていて。


「そういうことだけは…覚えているんだな」


そんな苦しげな呟きはあたしの耳には届かず、あたしは必死に両手を胸の前で組んで祈っていた。


お願いします。


どうかどうか。


桜ちゃんを助けて下さい。

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