あひるの仔に天使の羽根を
「あたしはそんなの出来ないって。だから……」
「じゃあ、あいつが自力でどうにかするのを待つしかないな」
「は!?」
「オレ……回復なんて、やったことないから」
「はあああああ!!?」
あたしは思わず久遠の胸倉掴んで怒鳴った。
「じゃあどうしてくれるのよ!!! 桜ちゃんに何かあったら、全部あんたのせいよ!!!」
それに対して、妖麗な顔は苛立ったように歪んでいく。
「オレのせいって何だよ!!! オレはな、わざわざ酸素供給制御装置をぶち壊して此処に来てやったのに、それを待たずして勝手に腹にナイフ突き刺したあいつの浅慮さが悪いんだろ!!?」
「な、ななな!!! 桜ちゃんのせいにするの!!? いい度胸ね、久遠!!! 助けに来たなら来たと、勿体ぶらないでさっさと現れれば良かったんでしょ!!!」
「何でオレがせりにそこまで言われないといけないのさ!!! このオレがわざわざ来てやって、あいつを蘇らして、そこまでしてやったのに礼の1つもないのかよ!!!」
「ああ、ムカツクわね、そのオレ様発言!!! 誰が助けに来いって言ったのよ!!!」
「ぎゃあぎゃあ煩い女だな、育ったのは胸だけかよ!!?」
「はあ!!? 何この変態!!! 人のこと散々貧相だの何だの言ったくせに、あたしの胸にいちゃもんつけるの!!?」
「はあああ、何で口の悪さは変わってないんだよ!!!」
「あんただってそうでしょ!!! 本当に刹那と大違い!!!」
言ってから、はっとした。
今、あたし何て言った?
刹那?
何であたし、そんなことを言ったの?
そして。
「久遠。あたし、あんたと昔会ったこと……あるの?」
そう、紅紫色の瞳に向けて問うた時だった。
「芹霞!!!」
後ろから玲くんの身体が被さってきたのは。