あひるの仔に天使の羽根を
・覚悟 玲Side
玲Side
**************
「玲、玲!!!
傍に居て、恐い恐いのー!!!」
僕に縋り、震え泣く芹霞の姿は尋常じゃなかった。
意識を飛ばす芹霞。
櫂を恐怖していた。
今まで抑圧されていた櫂への感情が爆発したのか。
それだけでは説明できない芹霞の姿。
それを見ていた櫂は――
破裂寸前だった。
絶望感に打ち拉(ひし)がれた切れ長の目は、やがて僕に対しての嫉妬に変わる。
それはまるで、以前の僕のよう。
無条件に芹霞に頼られる櫂に対する、僕の嫉妬の情。
だけど櫂。
お前が選んだのは芹霞じゃない。
何度も何度も、須臾を選んだんだ。
お前の長所でもあり欠点でもあるのは、その責任感の強さ。
それは紫堂で培われてきたお前の鎧。
それは芹霞だけが簡単に取り外せるものだった。
だけど。
芹霞以外の女が心に忍んだ今となっては、お前の心を頑なに縛り付けるだけの呪いの道具と化し、お前が外部からの圧に乱されぬよう、そしてお前自身が鎧を打ち破って暴挙に出ぬよう、お前を監視し締め上げる。
そして。
お前が"責任"を感じる限り、お前は須臾を選び続けるだろう。
例え心の奥底で想う女が別に居ても、お前なら手を出さない。
紫堂や仲間に執着があっても、切り捨てるのはその"執着"だ。
絶対的なる…潔い自制心。
そういう男だということを、僕はよく知っているから。
お前は僕に、須臾に……義理だてるだろう。
切り崩すのは周囲ではなく、己自身だ。
そしてそれは――
僕にとっての切り札。
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「玲、玲!!!
傍に居て、恐い恐いのー!!!」
僕に縋り、震え泣く芹霞の姿は尋常じゃなかった。
意識を飛ばす芹霞。
櫂を恐怖していた。
今まで抑圧されていた櫂への感情が爆発したのか。
それだけでは説明できない芹霞の姿。
それを見ていた櫂は――
破裂寸前だった。
絶望感に打ち拉(ひし)がれた切れ長の目は、やがて僕に対しての嫉妬に変わる。
それはまるで、以前の僕のよう。
無条件に芹霞に頼られる櫂に対する、僕の嫉妬の情。
だけど櫂。
お前が選んだのは芹霞じゃない。
何度も何度も、須臾を選んだんだ。
お前の長所でもあり欠点でもあるのは、その責任感の強さ。
それは紫堂で培われてきたお前の鎧。
それは芹霞だけが簡単に取り外せるものだった。
だけど。
芹霞以外の女が心に忍んだ今となっては、お前の心を頑なに縛り付けるだけの呪いの道具と化し、お前が外部からの圧に乱されぬよう、そしてお前自身が鎧を打ち破って暴挙に出ぬよう、お前を監視し締め上げる。
そして。
お前が"責任"を感じる限り、お前は須臾を選び続けるだろう。
例え心の奥底で想う女が別に居ても、お前なら手を出さない。
紫堂や仲間に執着があっても、切り捨てるのはその"執着"だ。
絶対的なる…潔い自制心。
そういう男だということを、僕はよく知っているから。
お前は僕に、須臾に……義理だてるだろう。
切り崩すのは周囲ではなく、己自身だ。
そしてそれは――
僕にとっての切り札。