あひるの仔に天使の羽根を
「お前が……桜を!!?」
そう口に出したのは櫂。
「ご存知でしたか」
そしてきっと彼は、此の地に来る前から桜を見知っていたのだろう。
「桜に十字架を与えたのは、お前か?」
僕の問いに、榊は笑みを作って頷いた。
「お前は――"断罪の執行人"か!!?」
それは確信めいたものだった。
だけど。
「違いますよ。桜くんも誤解していたようですが、私は1度たりとも、そのように名乗った覚えはありません」
「ぷぷぷぷ」
同時に司狼が笑い出し、
「おかしい。榊さんが"断罪の執行人"なんてさ!!! あはははは」
2人して笑い始める。
だとしたら、こいつらは何だ?
"断罪の執行人"とは誰だ?
「ねえ、早く戦おうよ。お姉さん達、死んでもいいの?」
ねだるような子供の声に、僕は拳に込めた力を加える。
「……櫂」
僕は漆黒の瞳を見つめる。
「僕が足止めするから、お前は何としてでも……芹霞と桜を救え」
僅かに櫂の瞳が何か言いたげに揺れた。
「仕方がないだろう!! お前はまだ"次期当主"だ!!」
そんな言い方しか出来ない僕に、僕自身嫌気が差すけれど。
だけど、そんな言い方でなければ櫂は納得しないだろう。