あひるの仔に天使の羽根を
「いいんだ、君はそれで」
俺はかっとなった。
だけど、
「お前……何処まで知っているんだよ!!!」
そう、言い返すことしか出来ない俺。
「うーん、残念だけどまだ断片。折角繋ぎ合わせをレイクンに託したのにさ、レイクン一杯一杯なんだもの。結局アカまで狩り出してしまったし~」
「はあああ!!? 緋狭姉も来てるのかよーッ!!!」
「あれ、知らなかった? 君と連絡とってたでしょ」
途端思い出す。
腕環を通して緋狭姉と会話した時。
――どこぞの使えぬ馬鹿犬が激しく発情し続けて私の存在を無視してくれたおかげで、忙しい私がわざわざ譲歩し、距離を縮めてお前と接触したことについて、何か異論はあるか。
何だよ、緋狭姉…わざわざ来たのかよ、此処に。
「まあ……別件で来訪せざるをえられなかったのもあるけどね。アカたるもの、抱えた案件で身動きとれなかったのは、ここに連なるガセ情報だって判って、怒り心頭だったからね。俺、とばっちり喰らって、怒鳴られ殴られまた血を吐いたよ。あはは~」
緋狭姉が怒って殴って血を吐いて、"あはは~"かよ。
俺なら泡吹いて失神もんだ。
「ガセ情報って?」
「ん? アカはさ、昭和初期に迷子になった幻の密輸品の行方と、日本地図から抹消された幻の街の行方追っててさ。というより俺の命? いいねえ、アカを使える俺。あはは~」
緋狭姉、こんな男に使われてるのかよ。
どれだけ貧乏になっちまったんだよ。
しかし。
何でこの男が言うことは、イチイチわざとらしいくらいに意味ありげなんだろ。
「まあひと段落したから、俺がここに呼び寄せたんだけれど、顎で使われることに対してまたアカが憤慨してさ~、タダじゃ動かないって言うから、賭けをしたんだ」
また賭けかよ。
というより、緋狭姉上司にたてついていいのかよ。
何なんだよ、こいつらは。
「で? 今度は?」
律儀に聞いちまう俺も俺だ。
そして――
「芹霞ちゃんが誰のものになるか」
聞かなきゃよかったって、後悔する羽目になる。