あひるの仔に天使の羽根を


「これで…君が仲間入りしてくれたから、私達は永遠に……」


柾は、酷く…咽(むせ)び泣いているようで。


「ふうん?」


その声に目を遣れば、氷皇が酷薄な笑いを浮かべていて。


「少し前に死んだはずだったんけどね、次期当主の弟…千歳は」


千歳?


いやそれより――


「死んだ?」


だって、生きているだろう…ほら。


しかし氷皇の顔は揺らぎなく、愉快そうな色さえ浮かんでいて。


「叔父と甥……恋仲…むしろ……叔父の片思いか。見ろよ、ほら…発情犬にはあんな濡れ場でも溜まらないか?」


促された先は……


禁断の――


「キ、キスッッッ!?」


叔父と甥同志のディープキス。


やべえって!!!


何してるんだよ、お前ら!!!


思い切り裏返った声を上げてしまった俺に、顔を上げた柾はこちらに険しい顔を向けてきて。


バレる前に、俺と氷皇は慌てて階段を駆け上がり、物陰に隠れた。


柾は凄まじい形相で追いかけてきたが、俺達に気づくことなく、反対側に駆けて行ってしまった。


隣の氷皇は、それはそれは本当に嬉しそうで。


肩を揺すってくつくつと笑い始めて。


「成程成程。歪みきってるねえ、各務の愛は。あはははは」


俺はただ気持ち悪いばかり。


何が嬉しくて…俺が言うのも何だけど、あまり目の保養にもなんねえ…同じ顔した男同士の濡れ場見て、興奮しねえといけないんだ。


そんなのありえねえだろ。


「もっと沢山君と語りたかったけれど、残念ながらもう時間だ。これは話したら喜ぶなあ、アカ。そういうドロドロした昼ドラ並の奴、好きだからな~」


確かに食いつきそうだけど。


その場面を容易に想像ついた俺が、うんざりとした心地になって溜息をついた時にはもう――氷皇の姿はなかった。


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