あひるの仔に天使の羽根を
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芹霞を腕に抱いた玲が帰ってきたのは、それから間もなくのことだった。
俺は敵の来襲に備えて見廻りしながら、部屋に居る遠坂の雄叫びを聞いていたりしていたが、其処に現れた玲は強ばった顔をして俺を見た。
意志的に強く輝く鳶色の瞳。
そこには多少の躊躇いはあるものの、信念のような強い一途さがあって。
「煌。由香ちゃん、イクミ。
朝まで――…
この部屋には来ないで貰いたい。
芹霞と僕を…2人きりにして欲しい」
――玲様は今夜……。
「……頼む」
玲が俺を見て、頭を下げた。
玲が俺に頭を下げるのは、初めてのことだった。
「……皆無事だったのか?」
俺はそんな玲を見ることが出来なくて。
力一杯握った拳をふるふると震わすだけで。
「…ああ。ただ桜は負傷して、緋狭さんに預けてる」
「そう……か」
負傷したのは心配だけれど、緋狭姉がいるなら安心だ。
「芹霞…またぶっ倒れたんだな」
「……ああ。怪我はないが…櫂に恐怖している」
「何故……?」
「判らない。だけど、事態は確実に悪くなってる」
そして暫く沈黙が続いて。
「煌。僕は……」
決意めいて口を開いた玲に、
「知ってる。桜から聞いた」
――玲様は今夜芹霞さんを……。
俺はそう言うしか出来なくて。
芹霞を腕に抱いた玲が帰ってきたのは、それから間もなくのことだった。
俺は敵の来襲に備えて見廻りしながら、部屋に居る遠坂の雄叫びを聞いていたりしていたが、其処に現れた玲は強ばった顔をして俺を見た。
意志的に強く輝く鳶色の瞳。
そこには多少の躊躇いはあるものの、信念のような強い一途さがあって。
「煌。由香ちゃん、イクミ。
朝まで――…
この部屋には来ないで貰いたい。
芹霞と僕を…2人きりにして欲しい」
――玲様は今夜……。
「……頼む」
玲が俺を見て、頭を下げた。
玲が俺に頭を下げるのは、初めてのことだった。
「……皆無事だったのか?」
俺はそんな玲を見ることが出来なくて。
力一杯握った拳をふるふると震わすだけで。
「…ああ。ただ桜は負傷して、緋狭さんに預けてる」
「そう……か」
負傷したのは心配だけれど、緋狭姉がいるなら安心だ。
「芹霞…またぶっ倒れたんだな」
「……ああ。怪我はないが…櫂に恐怖している」
「何故……?」
「判らない。だけど、事態は確実に悪くなってる」
そして暫く沈黙が続いて。
「煌。僕は……」
決意めいて口を開いた玲に、
「知ってる。桜から聞いた」
――玲様は今夜芹霞さんを……。
俺はそう言うしか出来なくて。