あひるの仔に天使の羽根を
§第5日目

・残像

*****************

水の中に群れていた、得体の知れぬ化け物に噛み付かれた四肢が痛くて痛くて。


声を上げて目を開ければ、真上から覗き込んでいたのは少年。


歳は、10代後半くらいか。


金髪に金の瞳。


外国人?


太陽を背にきらきらと輝いていて、

水で濡れた髪から、雫がぽたぽたと滴っている。



男?

女?


こんなに綺麗な顔をした人を見たことが無くて。



――ホントウニ?



何よりその瞳の色。


金色の奥底には、湖の色よりも深くて澄んだ……瑠璃色の静寂が拡がって漂っている。


それはまるで何かの宝石のように、ただきらきらと輝いて、魅せつけた。



――ナンノホウセキ?



「綺麗な瞳……」


痛みを忘れて思わずそう呟くと、その人は、苦々しげな色を顔に浮かべた。


「忌まわしいだけだよ。髪は染められるけれど、瞳は誤魔化し切れない。君のような…いや君よりももっともっと闇色の、漆黒の色合いだったらよかったのに」



――ドコカデミタ、ダレカノヒトミ。



「どうして?」


手を伸ばして、指の腹でその目の縁を触れて訊けば、



「何色にも染まらない、永遠の色だから」




――エイエンノ…ヤミノイロ。




その人は、儚げに笑った。



「でもあたしは好き。ずっとずっと見ていたくなる」



その瞳を真っ直ぐに見つめてそういえば、



「……ありがとう」



その人の瞳が、少しだけ赤くなった気がした。



――ソレハナゼ?

< 927 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop