あひるの仔に天使の羽根を
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酷く疲れる夢を見た気がする。


"約束の地(カナン)"での登場人物が入り乱れ、奇妙に構成されたあたしの夢。


気持ちが悪い。


ベッドから身体を起こして深呼吸をしていると、部屋に玲くんが入ってきた。


「あ…お風呂使わせて貰っちゃった。丁度起こそうと思ってた処だったんだけど、芹霞も入っておいで? 回復結界で傷口の縫合具合は落ち着いているはずだから、安心して大丈夫だよ」


どろどろとした汗をかいているからそうさせて貰おう。


こっくりと頷いて、そのまま直行しようと思ったけれど。


ねえ、玲くん。


「ここ…あたしに割り当てられた部屋だよね?」


一応確認してみたけれど、


「そうだね?」


電気をつけて今まであたしが寝ていたベッドに腰掛け、鳶色の髪をタオルでフキフキ、玲くんはいつものように微笑みながら答えた。


いや…玲くん。


お風呂くらいはいいよ。

ベッドに腰掛けようと気にしないし。

髪をタオルで拭いていても全然OK。


元々あたしの家のものでもないし、ケチ臭いことは言わないし。


入院中だって、あのVIP病室でずっと一緒にいたし、同じ浴室使ったし(彼が入るのはあたしが寝てからだったけど)、あの時以上の親密感を出していたって嫌悪感なんて全然湧いてないし。


気を遣いまくりの優しい玲くんが、気を許してくれてると思えば嬉しいし。


だけどさ。



その艶っぽさは何ですか!!!



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