あひるの仔に天使の羽根を
「鍵を寄越せ、煌!!!」
しかし煌はぶんぶんと頭を横に振った。
「絶対鍵は開けさせねえ!!!」
俺を睨み付けるその褐色の瞳からは、涙が流れていた。
「それが……俺の役目なんだよ!!!」
場がしんとなった。
認めない。
芹霞が嫌がっているだろ!?
合意じゃないの、判ってるんだろ!?
『煌、ねえ煌!!?』
それを判ってて、何で…そんなにまで辛そうな顔しても、何でそんな意固地になって助けにいかないんだよ、煌。
お前の役目は俺を制することじゃないだろう。
「お前を……呼んでるじゃないか、煌」
しかし煌は俯いて、またぶんぶんと頭を横に振るだけで。
両手拳を強く握りしめたまま、狂ったように頭を振り続ける。
『煌、煌、煌!!! 此処から出して!!!』
ドアがばんばんと叩かれる。
「何でだよ、煌。芹霞はお前に助けを求めているのに、何で動かないんだよ!!?」
そう……
芹霞が呼んでいるのは煌で。
俺じゃない。
煌の声が聞こえているのなら、当然俺の声だって聞こえているはずだ。
だけど、俺を呼ぶ声は聞こえない。
そのうち、ドアから聞こえる全ての音は消え、
『やだああああああ!!!』
芹霞の絶叫が遠くに届いた。