あひるの仔に天使の羽根を
「芹霞ッッッ!!!!」
俺は吠えるように叫ぶと、闇石を取り出し、ドアそのものを吹き飛ばして部屋の中に押し入った。
ベッドの上には、泣き叫ぶ…半裸の芹霞を組み敷いている、上半身裸の玲がいて。
芹霞の胸に続く首筋の…赤い花弁を見た途端、俺の中で何かがぷつりときれた。
俺は玲の鳶色の髪を鷲掴んで、頬を思い切り殴った。
ベッドから転がり落ちた玲に、構える暇を与えずに足で腹を殴り続け、それでも足りずに、闇の力を解放させた。
芹霞を…。
俺の芹霞を傷つける者は誰であろうが許さない。
殺してやる。
暗澹たる闇に心を染められた俺を止めたのは、煌で。
「櫂、正気に返れ!!!」
煌に、頬に一発拳をくらってはっと我に返る。
「本気で……殺しにくるなよ、櫂」
玲は腫れた頬を手でさすりながら立ち上がり俺を見た。
その鳶色の瞳は――
「遅いんだよ、飛び込んでくるのが」
穏やかで。
「僕が我慢できずに最後までいってたら、どうするつもりだったんだ?」
皮肉気な笑いを浮かべる端麗な顔。
え?
演技?
違う。
だって芹霞はこんなにも震えて泣いているじゃないか。
煌にガウンを着せられている芹霞すら、
泣きながらも訝しげに玲を見上げている。
ああ――そうか。
だからなのか。
――玲はな……玲は……!!! そこまでして賭けてんだよ!!
――それが……俺の役目なんだよ!!!
本当に。
誰も彼も理性がぶっ飛ぶような恋愛しているくせに。
――お前じゃないと駄目なんだよ、俺も桜も……玲も…!!!
こんな俺に、捨て身になりやがって。
捨てられるわけないじゃないか。
こんなにも愛しい奴らを――。