あひるの仔に天使の羽根を
・残香 玲Side
玲Side
**************
「もう――戻ったんだろ?」
僕の確信めいた問いに、
「――…ああ。
完全に全てを思い出した。
俺は――
須臾と此処には沈むつもりはない」
それは普段通りの――
悠然と…不敵に笑う『気高き獅子』。
もう、大丈夫だ。
それに僕は安心して息をつき…そして芹霞を見た。
吸い込まれそうな程、神秘的に輝く黒い瞳は。
乾ききらない涙で潤んで、怯懦に揺れて。
そうだろう。
僕は泣いて嫌がる芹霞を組み敷いた。
「――…っ」
言葉が出ない。
今更、何を言えばいいんだ?
芹霞の首筋には、僕が刻んだ罪の痕。
僕はぎゅっと目を瞑り、床に落ちていたシャツを手にとり身に付けると、ドアに向けて歩いた。
「玲、どこに行く?」
「散歩。鎮めてくる。男なら…判るだろう?」
櫂の問いに茶化すように、僕はそう笑って各務の家を出た。
気味悪いほどに、ひっそりとしていた。
暗闇の中、中庭の噴水の縁に腰掛ける。
空には月。
孤独に浮かぶ三日月。
それがとても侘びしくて…
酷く――
泣けてきた。
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「もう――戻ったんだろ?」
僕の確信めいた問いに、
「――…ああ。
完全に全てを思い出した。
俺は――
須臾と此処には沈むつもりはない」
それは普段通りの――
悠然と…不敵に笑う『気高き獅子』。
もう、大丈夫だ。
それに僕は安心して息をつき…そして芹霞を見た。
吸い込まれそうな程、神秘的に輝く黒い瞳は。
乾ききらない涙で潤んで、怯懦に揺れて。
そうだろう。
僕は泣いて嫌がる芹霞を組み敷いた。
「――…っ」
言葉が出ない。
今更、何を言えばいいんだ?
芹霞の首筋には、僕が刻んだ罪の痕。
僕はぎゅっと目を瞑り、床に落ちていたシャツを手にとり身に付けると、ドアに向けて歩いた。
「玲、どこに行く?」
「散歩。鎮めてくる。男なら…判るだろう?」
櫂の問いに茶化すように、僕はそう笑って各務の家を出た。
気味悪いほどに、ひっそりとしていた。
暗闇の中、中庭の噴水の縁に腰掛ける。
空には月。
孤独に浮かぶ三日月。
それがとても侘びしくて…
酷く――
泣けてきた。