あひるの仔に天使の羽根を
・溺愛
**************
よく考えれば――
すぐ判ったことだ。
元より玲くんとは、櫂を元に戻すために"付き合った"んだ。
櫂を取り戻そうと苦心している玲くんを、そして徹底的にやる性格を思えば、彼が何をしようと、それは彼の"思惑"の芝居だという結論は、直ぐ導き出せたはずなのに。
煌から種を明かされれば何てことはない。
あたしはただ玲くんに利用されただけで、最初から"未遂"の予定で。
そして玲くんの思惑通り、櫂が元に戻ったわけで。
櫂が戻るのならあたしがどうなろうと構いやしないけれど、それでもあたしは何も判らないまま、言い様にされていたというのが何か悔しい。
多分由香ちゃんも、玲くんの思惑を知っていたはずなのに。
あたしだけが事態を知らず、あたしだけが仲間外れ。
そして闇雲に玲くんに抵抗し、勝手に恐怖して。
まるで道化のように滑稽なあたしは、"真実"を見抜けなかった自分の愚かさを嘆くしかなくて。
目の前では煌が櫂に齧り付くように抱きついて、おいおい泣いている。
煌は煌で、櫂に捨てられると心配だったらしい。
本当に昔から煌は、外貌にそぐわず櫂が大好きっ子だ。
そんな可愛い煌を宥めながらも、櫂の目はあたしに向いていて。
憂いの含んだ切れ長の目。
険しさも冷たさも何もなく、何かを伝えるように…ただ熱っぽく揺れている瞳。
"おかえりなさい"
いつものあたしなら、煌を押しのけて、煌みたいにただひたすら素直に泣いていたと思う。
多分櫂も今、あたしがそう動くと思っている。
だけど……。
恐怖。
やはりあたしは櫂への恐怖が収まらない。
同時に。
櫂に近寄ることを躊躇うあたしがいて。
今この距離を保つのが、本来の位置関係なのだと諭す自分がいて。
あたしは動けない。
よく考えれば――
すぐ判ったことだ。
元より玲くんとは、櫂を元に戻すために"付き合った"んだ。
櫂を取り戻そうと苦心している玲くんを、そして徹底的にやる性格を思えば、彼が何をしようと、それは彼の"思惑"の芝居だという結論は、直ぐ導き出せたはずなのに。
煌から種を明かされれば何てことはない。
あたしはただ玲くんに利用されただけで、最初から"未遂"の予定で。
そして玲くんの思惑通り、櫂が元に戻ったわけで。
櫂が戻るのならあたしがどうなろうと構いやしないけれど、それでもあたしは何も判らないまま、言い様にされていたというのが何か悔しい。
多分由香ちゃんも、玲くんの思惑を知っていたはずなのに。
あたしだけが事態を知らず、あたしだけが仲間外れ。
そして闇雲に玲くんに抵抗し、勝手に恐怖して。
まるで道化のように滑稽なあたしは、"真実"を見抜けなかった自分の愚かさを嘆くしかなくて。
目の前では煌が櫂に齧り付くように抱きついて、おいおい泣いている。
煌は煌で、櫂に捨てられると心配だったらしい。
本当に昔から煌は、外貌にそぐわず櫂が大好きっ子だ。
そんな可愛い煌を宥めながらも、櫂の目はあたしに向いていて。
憂いの含んだ切れ長の目。
険しさも冷たさも何もなく、何かを伝えるように…ただ熱っぽく揺れている瞳。
"おかえりなさい"
いつものあたしなら、煌を押しのけて、煌みたいにただひたすら素直に泣いていたと思う。
多分櫂も今、あたしがそう動くと思っている。
だけど……。
恐怖。
やはりあたしは櫂への恐怖が収まらない。
同時に。
櫂に近寄ることを躊躇うあたしがいて。
今この距離を保つのが、本来の位置関係なのだと諭す自分がいて。
あたしは動けない。