あひるの仔に天使の羽根を

・溺愛

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よく考えれば――

すぐ判ったことだ。


元より玲くんとは、櫂を元に戻すために"付き合った"んだ。


櫂を取り戻そうと苦心している玲くんを、そして徹底的にやる性格を思えば、彼が何をしようと、それは彼の"思惑"の芝居だという結論は、直ぐ導き出せたはずなのに。


煌から種を明かされれば何てことはない。


あたしはただ玲くんに利用されただけで、最初から"未遂"の予定で。


そして玲くんの思惑通り、櫂が元に戻ったわけで。


櫂が戻るのならあたしがどうなろうと構いやしないけれど、それでもあたしは何も判らないまま、言い様にされていたというのが何か悔しい。


多分由香ちゃんも、玲くんの思惑を知っていたはずなのに。


あたしだけが事態を知らず、あたしだけが仲間外れ。


そして闇雲に玲くんに抵抗し、勝手に恐怖して。


まるで道化のように滑稽なあたしは、"真実"を見抜けなかった自分の愚かさを嘆くしかなくて。


目の前では煌が櫂に齧り付くように抱きついて、おいおい泣いている。


煌は煌で、櫂に捨てられると心配だったらしい。


本当に昔から煌は、外貌にそぐわず櫂が大好きっ子だ。


そんな可愛い煌を宥めながらも、櫂の目はあたしに向いていて。


憂いの含んだ切れ長の目。


険しさも冷たさも何もなく、何かを伝えるように…ただ熱っぽく揺れている瞳。


"おかえりなさい"


いつものあたしなら、煌を押しのけて、煌みたいにただひたすら素直に泣いていたと思う。


多分櫂も今、あたしがそう動くと思っている。


だけど……。


恐怖。


やはりあたしは櫂への恐怖が収まらない。


同時に。


櫂に近寄ることを躊躇うあたしがいて。

今この距離を保つのが、本来の位置関係なのだと諭す自分がいて。


あたしは動けない。




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