あひるの仔に天使の羽根を
「櫂、本当に動いて大丈夫?」
念を押して聞くあたしに、
「ああ。旭から貰ったという軟膏のおかげだな。
傷も致命的なものでもない。
それに――
早くしないとここを出られなくなる」
そう言った。
「出られない?」
物騒なことを言い出した櫂に、
「……本当に聞いてなかったんだな、お前」
呆れたように……溜息までつかれた。
「夕方になると、此処の場所は危険地帯になるんだよ」
機嫌が直ったのだろうか、いつものように玲くんは微笑んだ。
「危険って?」
あたしは馬鹿みたいに繰り返す。
「此処は――
敵だらけになります」
旭くんが姿には不似合いの……大人びた固い顔をして言った。
「は?」
敵?
「ええ。その前に此処……"混沌(カオス)"を出ないと、行き着かなくなります。
"約束の地(カナン)"の中心地、"神格領域(ハリス)"に。
ああ、もう日が落ちてきた。
早くしないと、"無知の森(アグノイア)"から襲ってきます。
あの……
"きょうしんしゃ"達が……」