あひるの仔に天使の羽根を
折角玲くんがそう説いてくれているのに、何故か煌は激昂して。
「玲…お前なあ!!!
じゃあさ、芹霞!!! 俺とも"お試し"しようぜ? 俺は恋する…」
「は!? あんたね、あたしが助けてっていっても無視(シカト)したくせに、何偉そうに傍観者ぶってるのよ!!! 罰よ罰!!! 暫く"恋する少年"シリーズは禁止!!!」
「はあ!? 何だよそれ!!! 玲は許されて、どうして俺は駄目なんだよ!!! 第一俺、お前にさっき張り手と脛蹴り喰らったんだぜ? どうして俺の方が玲より回数多いんだよ!!?」
あ~、煌が耳元で喚いて煩いったらありゃしない。
あたしは話題を無理やり変えた。
「あたしどうしても判らないんだけれど、どうしてあたしが呼んだら櫂が元に戻ったの? 名前呼んで戻るなら何回でも呼んだのに」
「え?」
「ああ?」
2人は苦虫を噛み潰したような顔を見合わせて、やがて大きな溜息をついた。
「判んないんだ……いや…判らないでいてくれた方いいけれど…」
「何だか……櫂も不憫だよな」
各々、何に対して嘆いているのかさっぱり判らない。
「なあ……玲、櫂の逆襲怖くね?」
「………。確かに…つけすぎちゃったし」
玲くんの視線があたしの首元に。
なんだろ。
居たたまれないような顔をしている割には、鳶色の瞳は満足げできらきらして。
逆に肩にある橙色は不穏な空気に包まれ…思わず覗き込んだ褐色の瞳は、苛立ったように細くなってきて……
「やっぱムカつく!!!
玲!!! 表出ろ!!!」
煌……
此処、表だよ?
そんな時。
「嫉妬は見苦しいぞ、馬鹿犬」
聞き慣れた声が、闇に響いた。