あひるの仔に天使の羽根を
・回復 桜Side
桜Side
****************
目覚めた時、私は闇色に染まった空の元、木陰で紅い球状の結界の中に横たわっていた。
艶然と微笑む赤い美女の姿を目にして、私は緋狭様に助けられたのだと理解した。
彼女が此の地にいることに違和感と不安を感じながらも、彼女がいるのなら、芹霞さんは大丈夫だという安心感がそれに勝り、私は安堵の息をつく。
上体を起こして頭を垂らそうとした時、突如凄まじい嘔吐感と目眩に襲われて、地面に伏せってしまった。
――コロセコロセ。
複数の声が不意に聞こえて、私は身構えた。
途端。
景色がぐにゃりと歪み、場面が変わる。
視界一杯に真紅色が拡がったと思うと、裂くようにまた新たな情景が現れた。
――ドウシテ?
荒野に佇んでいた私。
嗅ぎ慣れた死臭と…鉄の臭い。
これは私の過去か?
それとも現在か?
手にあるのは裂岩糸。
私の全身は、他人の血飛沫で赤く染まっている。
――ネエドウシテ?
私の足下に積まれているのは、夥しい…かつて人型であった肉の塊。
何の感慨もない、人間の成れの果て。
憐憫も後悔もない。
彼らは皆、私に敵わなかった。
これは当然の事象だ。
私は屍を踏みつけ、歩いて行く。
****************
目覚めた時、私は闇色に染まった空の元、木陰で紅い球状の結界の中に横たわっていた。
艶然と微笑む赤い美女の姿を目にして、私は緋狭様に助けられたのだと理解した。
彼女が此の地にいることに違和感と不安を感じながらも、彼女がいるのなら、芹霞さんは大丈夫だという安心感がそれに勝り、私は安堵の息をつく。
上体を起こして頭を垂らそうとした時、突如凄まじい嘔吐感と目眩に襲われて、地面に伏せってしまった。
――コロセコロセ。
複数の声が不意に聞こえて、私は身構えた。
途端。
景色がぐにゃりと歪み、場面が変わる。
視界一杯に真紅色が拡がったと思うと、裂くようにまた新たな情景が現れた。
――ドウシテ?
荒野に佇んでいた私。
嗅ぎ慣れた死臭と…鉄の臭い。
これは私の過去か?
それとも現在か?
手にあるのは裂岩糸。
私の全身は、他人の血飛沫で赤く染まっている。
――ネエドウシテ?
私の足下に積まれているのは、夥しい…かつて人型であった肉の塊。
何の感慨もない、人間の成れの果て。
憐憫も後悔もない。
彼らは皆、私に敵わなかった。
これは当然の事象だ。
私は屍を踏みつけ、歩いて行く。