あひるの仔に天使の羽根を
 
それから間もなく玲様と煌が戻り、同時に遠坂由香と合流出来て、いつも集まっている客間に集合した。


「先刻姉御と会ったら、姉御はイクミ引き摺り込んで、酒と肴を見つけてから来るって~。で、神崎は風呂入ってから来るらしい」


そう告げた遠坂由香が、急に三日月型の目をして、


「あんな数、あんな強く。簡単に消えないのにね~、師匠?」


それに、玲様はげほげほと咽せ返った。


「~ッッッ!!! 消えろ、消えろッッッ!!!

んなもん早く綺麗さっぱり消えちまえッッ!!!」


そう激昂して、地団駄を踏み始めた馬鹿蜜柑。


ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃん、まるで負け犬の遠吠えだ。


そんな場を制したのは櫂様で。


「無駄話は終わりだ。本題に入る」


言葉尻は淡々としているものの、その顔は明らかに不機嫌そうで。

こめかみにヒクヒクと動く青筋があることを、私は見逃しはしない。


櫂様にも判っているのだろう。


それによって櫂様は正気に返ったのだから。


例え…玲様がやり過ぎたのだとしても。


櫂様は一旦言葉を切ると、1回深呼吸をして私達を見据えた。


「お前達の握っている情報を寄越せ。

虚仮にされたままでは終わらせない」


そう――

不敵な笑いを浮かべた。


そんないつもの櫂様の表情。


思わず笑みが零れたのは、私だけではないはずだ。


ようやく――

私達の秩序が回復されたのだから。

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