あひるの仔に天使の羽根を
テーブルには、青い光に包まれたノート型パソコン。
2人掛ソファには櫂様が座り、向かい側の対のソファには玲様と遠坂由香が、パソコンの画面を切り換えながら説明をし、私と煌は床に座り込みながら横からそれを聞いていた。
「遅くなりましたー」
そして間もなくしてガウンを羽織ったTシャツとハーフパンツ姿の芹霞さんがやってきた。
髪を軽く結い上げ白い項(うなじ)をさらけ出し、桜色に上気した…やけに艶めいた肌を見せる芹霞さんに、
「お前~ッッッ!!! いつもそんな髪型しねーだろうが!!!」
先に反応したのは真っ赤な顔の煌で。
「風邪ひいちゃうから、髪おろそうね?」
玲様はにっこり微笑み、問答無用で髪のピンをとった。
はらりと、魔の領域に黒髪が落ちてくる。
部屋に充満するのは、誘惑めいた芹霞さんの石鹸の香り。
あまりに不意打ち過ぎる姿での出現に、不覚にもあっさり囚われた屈強の男達は、隠しようもない熱を帯びた眼差しのまま、暫し言葉を忘れて。
私も――そうなのだろう。
心臓が、やけに早くて喉が渇く。
「ねえ……なんか喋ろうよ?」
異様な空気に、芹霞さんは身の危険でも感じたのか、その大きな目に若干怯えを入り混ぜて。
その後の沈黙が、やけに重く感じるのは気のせいか。
それを切り裂いたのは、遠坂由香のむふふという笑い声。
それが余程意味あり気に思えたのだろう。
「……なによ、皆して除け者にして…。いいもん、あたし……」
今にも退室しそうな、拗ねたような呟きが耳に届く。
「除け者になんかしてないよ、神崎。そういうの、被害妄想っていうんだぞ? ちゃんと向き合わなくちゃ、ね?」