あひるの仔に天使の羽根を


その返しが、芹霞さんを刺激する何かを投げかけたらしい。


「櫂!!!」


多少の震えはあったけれど、芹霞さんは突然大声で櫂様の名前を呼んだ。


「な、何だ?」


櫂様も驚いたらしく、日頃の彼らしからぬ動揺が感じられた。


「あたしも、話聞いていてもいい?」


「……? ……ああ」


頷いた櫂様を見て、芹霞さんは――櫂様の隣に腰掛けた。


その時、息を飲むような緊迫した音は誰から聞こえたものなのか。


もう日常的になっている光景だったとはいえ、芹霞さん自ら、こんなに強張った顔で櫂様の隣に座ることはなかったし、何より芹霞さんの小刻みの震動は異常だったから。


それでも誰も何も言えず、それを許容するしかなくて。


誰もが口を閉ざしてしまった時、





「必要以上に意識しすぎだ、未熟者めが。酒を不味くする気か」




美しい隻腕の女性が、一升瓶を手に現れた。




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