ロゼッタ
「ロゼッタの心臓っつったら、あの、この世のありとあらゆるモノを無に帰すって噂の宝石です、か?」
「あぁそうだ。それのありかは知っているか?」
「いや…」
ボスは真剣に俺の目を見る。
まるで人を殺してしまえそうなその目に、俺は逆らえない。
「我が娘、“ローズマリー”の胸に埋まっているのだ」
ミス・ローズマリーなら聞いたことがある。
ボスの一人娘で、社交界デビューは弱冠五歳だったとか。
たしか今は十二歳だったような。
「ローズマリーは今、100キロ離れた田舎町にいる。そこからここまで、安全に連れてきて欲しいのだ」
何だか普段の任務よりも易しい内容に、俺は小さく安堵の息を吐く。
「詳細は追って説明する。
…やってくれるな?」
もちろん拒否権は、ない。
「イエス・マイロード」
了承の合図をし、俺は部屋を後にした。
.