ロゼッタ
100キロの道のり。
行きは車で簡単に行けるだろうけど、帰りは果たして簡単にいくものだろうか。
***
思ったより時間がかかってしまって、3日もたってしまった。
ミス・ローズマリーがいるはずの土地、イザラムには、人影の一つも見当たらない。
「お前がヒイラギか」
突如呼ばれた名前に、反射的に振り向く。
すると、そこには人形の様な格好をした幼い少女が立っていた。
「そうだが…もしかして、ミス・ローズマリーか?」
「あぁ」
端正な顔立ちに似合わない男の様な言葉遣いに、少し動揺する。
この少女がミス・ローズマリー。
政府のボスの一人娘か。
「お前がヒイラギなら、早く私を父の元へ連れて行け」
命令口調になんだかむなしくなる。
やっぱり御令嬢は違うな。
「はいはい。じゃ、車に乗れよ」
車の助手席の扉を開けてやると、ミス・ローズマリーは「こんなに短い車は初めて見たぞ」と大きな目を丸くした。
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