ロゼッタ



灰色の煙が揺らぐ。
車は煙草特有の匂いに塗れた。


「おい、ヒイラギ」


ふと、ミス・ローズマリーが声をかけてきた。
煙草の煙が煙たかったのだろうか、と思い、車を運転しながらなので声だけで反応する。


「どうした?」


そう聞くと、ミス・ローズマリーはうつむきながら口篭りながら、言葉を放つ。


「お前、私のこと、なんて呼んでる?」

「あ?ミス・ローズマリーだけど…」


唐突にそんなことを聞かれて、少し拍子抜けしてしまう。
名前の呼び方なんか聞いてどうするのだろうと思っていると、さっきまでうつむいていたミス・ローズマリーが勢いよく顔をあげた。


「その『ミス』っていうのはやめろ!なんか腹が立つ!」

「あぁ?」

「だ、だから、ローズで良い」


顔を真っ赤にしながら、ミス・ローズマリーは呟く。
なんだ、そんなことが言いたかったのか。


「分かった。じゃあローズって呼ぶな」


そう微笑んでやると、ミス・ローズマリー、もといローズは頬を薔薇色に染めながら笑った。





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