音楽のある世界へ(仮題)
プロローグ
9月1日
いったい昨日までの暑さはなんだったのか?
と、疑いたくなるほど
新宿中央公園には
さわやかな風が吹き抜けていた。
木陰のベンチは運良く空いていて、
腰を下ろした瞬間「あ~」と
自然に背伸びをしてしまう。
気持ちいい……
胸ポケットから
緑色をしたパッケージの
メンソール煙草を取り出し、
100円ライターで火をつける。
ふ~
夏川瞬は
新宿区にある私立高校に通う二年生だが、
まぁご多分にもれず、
真面目な生徒とは言いがたかった。
今日から新学期だというのに
学校へ向う気力はとうの昔に失せていた。
どうせ今日は始業式だけでたいした行事も無いし、
とくに授業の単位を気にすることなどない。
勝手にサボタージュを決め込んだ瞬は
この後、どこに遊びに行くかを思案し出した。
夏休みにバイトした資金は
まだポケットの中にそこそこ残っていて、
ちょっとした小旅行ですら
余裕で行けそうだった。
時折吹き抜ける風がカサカサと髪を揺らし
本当に気分がいい。
そのときベンチの背後に立つ人影に気付き
心臓がドキリと音を立てた。
黒くて長い髪の毛のシルエット
半袖の白いシャツ
かすかに鼻腔をくすぐる甘い香り
警官じゃないと一瞬で覚り、
安堵のため息をもらす。
「ここ、隣いいかな」
と、その人物が話しかけてくる。
澄んだトーンの声。
突然話しかけられ戸惑う瞬であったが、
公共のベンチゆえ、
断る理由も見当たらない。
ベンチの端っこに腰掛けた女性は
「火、貸してもらえないですか」
と、彼女はこちらを向いて言った。
いったい昨日までの暑さはなんだったのか?
と、疑いたくなるほど
新宿中央公園には
さわやかな風が吹き抜けていた。
木陰のベンチは運良く空いていて、
腰を下ろした瞬間「あ~」と
自然に背伸びをしてしまう。
気持ちいい……
胸ポケットから
緑色をしたパッケージの
メンソール煙草を取り出し、
100円ライターで火をつける。
ふ~
夏川瞬は
新宿区にある私立高校に通う二年生だが、
まぁご多分にもれず、
真面目な生徒とは言いがたかった。
今日から新学期だというのに
学校へ向う気力はとうの昔に失せていた。
どうせ今日は始業式だけでたいした行事も無いし、
とくに授業の単位を気にすることなどない。
勝手にサボタージュを決め込んだ瞬は
この後、どこに遊びに行くかを思案し出した。
夏休みにバイトした資金は
まだポケットの中にそこそこ残っていて、
ちょっとした小旅行ですら
余裕で行けそうだった。
時折吹き抜ける風がカサカサと髪を揺らし
本当に気分がいい。
そのときベンチの背後に立つ人影に気付き
心臓がドキリと音を立てた。
黒くて長い髪の毛のシルエット
半袖の白いシャツ
かすかに鼻腔をくすぐる甘い香り
警官じゃないと一瞬で覚り、
安堵のため息をもらす。
「ここ、隣いいかな」
と、その人物が話しかけてくる。
澄んだトーンの声。
突然話しかけられ戸惑う瞬であったが、
公共のベンチゆえ、
断る理由も見当たらない。
ベンチの端っこに腰掛けた女性は
「火、貸してもらえないですか」
と、彼女はこちらを向いて言った。