音楽のある世界へ(仮題)
「三宅くん荒れてるね」

と、和泉依子が声をかけてきた。

「あは、そうなんだよ、どうしたんあいつ」


「ん~、たぶん部活のことで先生から
なんか言われたんじゃないの」

「あぁ」


「あなたが、昨日練習サボるしさw」

「いや、ちょっと体調が」

「よく言うね、至って健康そうじゃない」

「それがそうでもないんだよ」


同じクラス(C組)の依子は
バンドの紅一点でもあり、
3歳から始めたというピアノは
シロウト目にみてもなかなか
の腕である。

バンドではキーボードとベースを担当。

冷静沈着で成績優秀、姉御肌でもあり、
実家が不動産事業を営んでいることから、
バンドの運営費の大部分を
依子が出資している
というこの実情。

瞬も、
何回依子さんに奢ってもらったか
数え切れない。

あれ


今まで気がつかなかったけど

依子からはほんのりといい匂いがした。


近くで見ると薄っすらと化粧しているんだな。

こんなことに
気付くなんて。


「あれ、なんか、目がぼ~っとしてるわ
やっぱ、具合悪いのかな?」


「え、そう」


「うん。熱あるんじゃない」

「そっ そうか?」

「遊び過ぎ?  
夜中まで起きてるから
じゃないの」

と、笑って言った。

その笑顔は
今まで見たこともないくらい
眩しさだった。





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