音楽のある世界へ(仮題)
それでまた

新学期にはお決まりの転校生か。

私立校だっつうのに、
なんなの、このワンパターンぶりは。


だけど、その転校生
相当可愛いときたら
やっぱり
一度は顔を見てみたいという気もする。

意外と
野次馬根性ってやつだな。





「ねぇ、部室いくよ~」

と、
依子にうながされ、
音楽準備室へと足をむけた。

普段からこの部屋が
軽音楽部の部室として使われているのだ。


すでにリョウとD組の阿部正樹は
部屋で待っていた。

いつも寡黙な阿部ちゃんは
バンドではドラムス担当。
実はバンドにおいてこのドラムスは
重要なパートなのである。

つまり阿部ちゃん無しで
うちのバンドは成立しないのだ。


「来たな」

「なにかあったの?」と
依子が口を開く。


「呼び出しだ」
と、目線を合わせずにリョウがつぶやく。


「誰から?」


「顧問だよ」


「え? カバ親父から」

リョウの口ぶりからして、
非常にやっかいな問題が
起こったことは理解できた。

カバ親父こと英語の後藤和幸教諭は
軽音楽部顧問という肩書きはあっても、
普段はほとんど口を出さず、
顔を見せることもない。


「カバ親父が何の用かな~」

「なんか奢ってくれるとか」

「まさか」






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