音楽のある世界へ(仮題)
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廊下は全員の足取りが重かった。
だが、瞬はまだ心のどこかで楽観視
していた部分もあり、
「まぁ、最悪部活動停止は
止むを得ないんじゃないか」
と、言ってみた。
「バンドの練習場所どうするんだよ」
リョウが表情を変えず
ぶっきらぼうにつぶやく。
「そうだよねぇ、
都内のスタジオは安くないもんね」と依子。
「厳しいな」阿部も腕組みしている。
もしかして
これは瞬が考えていたより
ずっと深刻な問題に直面している
のかもしれない。
バンドの危機。
セプテンバークライムの危機
ちょうど一年前の九月、
4人のバンドは結成した。
バンド名をつけたのは依子。
九月に結成したので
セプテンバーはいいけど
クライムってなにさ。
犯罪じゃないか。
「まぁ、決して善人ばかりの
集まりってわけでもないから」
と、笑って言った。
「いいんじゃないか、それで」
というリョウの一言で
バンド名は簡単に決まった。
略して「セプクラ」
なんだか絞まりのない感じだけれど、
こうして4人のバンド活動は始まったのだ。