音楽のある世界へ(仮題)
あっ

そういうことね


瞬は黙って
ポケットの中にあった
赤い使い捨てライターを取り差し出す。


「ありがと」

振り向いた彼女の顔にまた心臓が高鳴る。


アーモンドの形をした大きな瞳

すっと尖った鼻


心持ち厚めの唇も


その全体的に整った美しさは
そのパーツを集める小さな顔に
集約されていた。


だけど


この娘、高校生くらいかな。

着ている白いシャツから
高校名を判別することは難しかった。

チェックのミニスカートにも特徴は無い。


彼女が火をつけた

一目で外国製とわかる
青いパッケージの煙草は、

普段、自分が目にすることのない
珍しい銘柄だった。



「なに吸ってるの?」


言ってみてから

こんな質問はちょっと野暮だったかな、

と、少しだけ反省してみる。


「ん、あぁ これね」

彼女は青いパッケージに
目を落とし、クスっと笑って

一言

「ペッテロアーズ」と言った

「えっ」


「たぶん……」と言ってまた笑った。

「自分もよく知らないんだ、
父親のを盗んで吸ってるだけだから」


「あぁ、そういうこと」

二人は顔を見合わせてまた笑った。

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