音楽のある世界へ(仮題)
「そういえば、オリジナルの詞は書けたの?」

リョウから夏休み明けまでに最低二曲書けと
課題を突きつけられていたのだ。

「頭の中には漠然としたものは
浮かんでいるんだけど、
まだ完成していないんだ」

これは本当だった。

17歳の夏にしか書けない詞を考えていた、
どうも漠然とし過ぎていて形にならなかったが、昨日の体験でやっとポイントがつかめた気がする。

「三宅くん、文化祭までに新曲作るって
言ってたし、間に合うのかな」


依子はリョウと阿部ちゃんに対しては
クンづけで、俺には呼び捨てだ。
うれしい気持ちもあるが、舐められている
ような気もする。

「文化祭は11月だろ、まだ大丈夫だよ」


「なに言ってんの、それまでに
練習したりアレンジしなきゃならないし、
そんなに余裕ってわけじゃないよ」


真面目だなと、思う。

特別優等生じゃないのに、
勉強もできて、顔もスタイルも悪くない。

上級生の中にも依子を狙っている人は多いと聞く。

年上のイケメン国立大生と付き合っている。
という噂が立つのも、なるほど
と納得してしまうのが和泉依子だ。

「そっか、依子はベースとキーボード
両方やらなきゃならないのか」

「そうなんだよね~」

「文化祭だけサポートを
入れるわけにいかないのかな」

「いや~
三宅くんの独善体制にとても
ついてこられないでしょ」

と、依子は笑った。

そもそも高校生でバンドをやろうなんて
やつは元から我が強いやつが多い。

うちのバンドからして、
そういった理由から
リーダーであるリョウと
主義主張が相反する
数多くの人間が脱退していった。

「ん~、
部活はともかくセプクラの方は、
さすがにな~もし誰か入ってきても
一日で辞めるだろうな」








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