音楽のある世界へ(仮題)
いや
地方だってカラオケくらいあるはずだよな。
と、思いつつも
とりあえず、そんなことはどうだっていい。
こうして、彼女と二人きり
個室にいられるだけで胸はドキドキなのだ。
瞬は
まず手始めに割とポピュラーな洋楽を
チョイスして歌った。
パチパチパチパチ
「あっ うまいじゃん」
「ど、ども」
「全身全霊を込めて
歌っていた気がするよ」
「そうかな」
「本当に」
お世辞かもしれないが、
褒められたことが純粋にうれしい。
「今のビートルズだよね?」
「そうだね」
「知ってるよ」
「有名だもんね」
「世界的にね」と
言って彼女は笑った。
「なんていう曲?」
「サムシングだね」
「そのままだ」
「えっ そのまま?」
「歌詞の内容が」
「ないよう?」
「うん、障害を乗り越える姿が素敵だって」
瞬には彼女が言う
なにが「そのまま」なのかは
わからなかった。
だけど、そう語る彼女の笑顔は美しかった。