音楽のある世界へ(仮題)
長いキスだった



いや

そう感じただけなのかもしれない。




プルルル  プルルル


突然個室の内線電話が鳴った。

二人はビクっとして反射的に離れる。


まるで個室内でキスをしていたことを
咎めるかのような音だ。


「はい」と、受話器を取る。


「お時間10分前で~す」と
能天気な店員の声。

「はい」

延長を促されたが、
それは断った。

心臓がバクバクして、店員への
受け答えすら上の空。


カラオケボックスを出ると


雑踏の中を二人


気まずい雰囲気で歩き出す


いきなりキスして怒っているのかな

と、瞬は心の中で反芻した。




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