その先へ
保健室を出てしばらくすると、


「ジュン、待ってよ!!」


と、遠くから僕を呼ぶ声がする。
カノンとフミナだ。


「そんな急に出て行かないでよ!!」


2人が息を切らしながら駆け寄って来た。


「あっ、ごめん」


その時僕はやっと我に返り、自分の身勝手さに気付く。


「大好きなお姉ちゃんの恋バナなんて聞きたくないか」

「でも、8歳離れてる割に仲良過ぎだよね。弁当だってアイちゃんが作ってるでしょ?何か理由がなくちゃそこまで出来ないんじゃ…」


カノンの洞察力にドキッとし、フミナの推理力に言葉を失った。

2人の視線が僕にあるのは分かっていたが、何も返せずにいた。


するとカノンが、


「年が離れてるから仲良いんじゃない?私妹2人いるけど、下の妹とは喧嘩しないし」


と、さりげなくフォローをしてくれた。
カノンの話にフミナも納得しているようだ。




僕は家族の話が苦手で話したくも聞かれたくもない。

だからと言って家族の話は禁句だと周りに気を遣われたくもない。

カノンには僕の気持ちが読めるのだろうか。

彼女の優しさで一気に心が温かくなっていった。
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