その先へ
高校3年生にもなって好きな人がいないなんてことはない。

頭では分かっていた。
ただ心は裏腹で動揺がうまく隠せない。


「誰か気になる?」


彼女は僕の目をジッと見ながら、返事を待っている。

あまりに真っ直ぐな彼女の眼差しに思わず目をそらした。


気になる…
知りたい…


でも…。


その人を知ってしまったら…。

僕はどうなってしまうんだろう…。

彼女と今までみたいに接することが出来るのだろうか…。


頭の中で複雑な思いが交差する。

聞くべきか。

聞かないべきか。


「あっ!!」


僕の返事を待たずして、カノンがハッとした。


「もうこんな時間!!部活始まっちゃう!!じゃあね、ジュン。この話はまた」


そう言い残し、彼女は足早に階段を上って行った。
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